「サイさん、落ち葉がいっぱいですなあ。」
「桜の葉です。また春が来て
花が咲くのがたのしみですなあ。」
「木登り、してみたかったんですよ。」
「カバさんもですか。」
「動物園にいたころは
木登りさせてもらえませんでしたからなあ。」
「でもこれって・・・。」
「木登りっていうより、木乗り・・・?」
「サイさん。」
「はい?」
「おなかがすきました。」
「もうちょっとがんばりましょう。
住吉神社へ寄ってから帰りましょう。」
「サイさん。」
「はい?」
「読めませんけど。」
「ここで清めて・・・。」
「サイさん。」
「はい?」
「お参りするといいことがあるの?」
「そうですなあ・・・。
心がけしだいですな。」
「カバさん。」
「おなかがすいて動けません。」
「カバさん、帰ったらケーキが買ってありますけど。」
「サイさん!さあ、元気に帰りましょう!」
「下り坂だし♪ ケーキケーキ♪」
「カバさん、ケーキは逃げませんから
転ばないように気をつけてくだサイ。」
「この水車小屋にはだれが住んでいるんでしょう?」
「水車は回っているんですが
人の気配はありませんなあ。」
「こんにちは~!」
「どなたかいらっしゃいますか?」
「いないみたいですなあ。」
「あそこに犬がいますよ。」
「サイさん、もし犬だったらどうなっていたと思います?」
「動物園に行かなかったでしょうなあ。」
「なるほど。」
「サイさん。」
「はい?」
「また登るの?」
「上り坂ですから。」
「足元がよくないですな。」
「どうしてこんなに急なところを・・・。」
「運動不足解消しましょう。」
「サイさんは前向きですなあ・・・。」
「二の丸広場へ行ってみましょう。」
「わあ。」
「広いですなあ。」
「広いですなあ。」
「あれ、カバさん・・・。」
「またお昼寝ですか?」
「坂で疲れましたよ。」
「そうですな。」
「つきあいますよ。」
「日差しが気持ちいいですなあ。」
「カバさん、もう寝たんですか・・・。」
「ぐー。」
「カバさん、外に出るのに気持ちがいい季節ですなあ。」
「泳ぎたいです。」
「カモさんがいますよ。」
「いいですなあ。」
「思えばカバさんと歩いてきましたなあ。」
「歩いてますがなにか?」
「いや・・・人生を、ですよ。」
「ときには石畳の道だったり・・・。」
「花が咲いているときもあり・・・。」
「食べられる?」
「沼に落ちそうなときもありました。」
「サイさん、そんなに波乱万丈な人生でしたっけ?」
「カバさんはどうなんです?」
「そりゃあもう・・・・・
おいしいものを食べたり、ときにはまずいものを食べたりです。」
「カバさんといると思い出に浸るのがばかばかしくなってきますな。」
「サイさん、思い出よりお風呂に浸るほうが気持ちがいいですよ。」
「・・・・ふう。」
「水車小屋、今日はだれかいますかなあ。」